大丈夫。
きっと、私みたいにただ景色を見に来た人だ。
皆が皆、あの男みたいな人じゃないってわかってる。
だから、落ち着いて、私の心臓。
はじめましての人は、怖くて仕方ない。
それだけは、いまだに慣れない。
振り向くことができないまま時間は過ぎる。
男の人は、さっきの声以来言葉を発さない。
どこかに、行ってしまっただろうか。
すると、突然カシャッという音が側で聞こえた。
不意に顔を向けた。
すると、そこには男の人が立っていて、思わずビクッと体が震えた。
その人は、カメラを構えていて高台から見える景色にレンズを向けていた。
カメラのファインダーを真剣な瞳で覗き込んでいる。
さっきの声の主、だろうか?


