でも、携帯がなかったら困るよね?
ここで待ってたら出てくるかな?
出発がどうとか言ってたし。
その時にささっと渡せば大丈夫かな?
本当は、もう少し話がしたかったけど、仕事なら仕方ないよね。
私は、建物の壁にもたれかかり楓くんが出てくるのを待った。
楓くんの事が知りたい。
男の人を、知りたいと思えた自分を大切にしたい。
好きだと思えた奇跡を、大切にしたい。
しばらくそうして待っていると、扉が開かれた。
「あ・・・」
出てくるかな?
壁から体を離し扉の方へ向き直る。
「じゃあ、頑張ってね。すぐそこに社長の車来てると思うから」
「ああ」
人の出てくる気配に、様子を伺う。
楓くんの声!
思わず飛び出すと・・・。


