「さっきから、電話したのに。なにして・・・」
その声は、楓くんに向けられていて。
私は怖くなって、動けずにいた。
楓くんも何も言葉を発さず。
「・・・あれ?君・・・、梨乃ちゃん?」
突然、呼ばれた名前にビクッと体を震わせた。
私を、知ってる・・・?
恐る恐るあげた顔。
その先に見たのは、あの時の社長さんだ。
「・・・しゃちょ・・・さ・・・」
「うん。そうだよ。久しぶりだね。大丈夫かい?」
「・・・ごめんなさ・・・、わた・・・・わたし・・・」
社長さんは、少し離れた場所から私に声をかける。
それは、前会ったとき私が男の人が怖いと知ったからだろう。
「楓、梨乃ちゃんに何かしたの?」
「・・・俺は」
言いよどむ楓くんに、社長さんはふぅと息を吐いた。


