楓くんは大丈夫なんだって思ってた。
自分が、男の人が苦手なことも忘れるくらいだったのに。
一瞬にして引き戻される。
触れてなんかいないのに、何度も何度も唇を拭った。
唇が切れて、血が手の甲に擦れた。
「おい、なにやって・・・」
楓くんが手を伸ばす。
その手が、あの時の男と重なる。
怖い、怖い、怖いっ。
「こな・・・っ、こないでっ・・・・触らないでっ!!!」
身体を縮ませてて叫んだ。
楓くんの手が、私に触れることはなかった。
「楓?」
人の声。
それも、男の人の声がして、身体をさらに震わせる。
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