「じゃあ、背中合わせで座ってみようか」



ついに始まった撮影。
緊張が止まらなくて心臓はさっきから薄らいくらいに鳴り響いている。


言われたまま座ると、背中に感じる楓くんの温もり。
違う、今はKAEDEなんだ・・・。




「おい、落ち着けよ。普通でいいから」

「う、うん」



KAEDEが声をかけてくれ、少しだけホッとする。
KAEDEの足を引っ張ってはいけない。




「お前も、楽しめばいい。こういうの、なかなか経験できることじゃないだろ」

「そうだね。うん、楽しむ・・・。うん。楽しんでみる」



そうだ。
KAEDEと一緒に撮影ができるんだ。
必死で頭回らなかったけど、ものすごいことだよ。


男の人が怖いとか、撮影が緊張するとか、もったいないよね。
周りにいるスタッフは、皆かぼちゃにじゃがいもに人参。
そう思う事にしよう。


そうすれば、少しは気がまぎれる。




「ありがとう、KAEDE」




私は顔をあげた。