「はぁー…困ったな…」



理沙が考え込むと、そのままそこで時間が過ぎていった。



しばらくして、理沙がゆっくりと顔を上げて携帯を見る。



「ヤバイっ…もうそろそろ戻って夕飯の支度しないと…」



鞄に携帯を入れ、理沙は立ち上がり、重い足取りで正面玄関へ向かう。



そして正面玄関の近くの木陰から、そっと覗くと。



「先輩…まだいる」



楠木は私服で玄関前の階段に座っていた。



「……なんで?」



ボソッとそう呟いて、理沙がゆっくりと玄関前に向かう。



すると理沙に気づいた楠木が立ち上がる。



「……お疲れ」



「…お疲れさまです…」



理沙は楠木の顔は見れず、やや下を見ていた。



「電話…してたんだけど、出たくなかったよな?」



「……すみません」



「いや、いいよ、でも話したいことがあったから…」