それでいい。
それだけで十分だよ。
多くを望んじゃいけない。
信号がパッと青に変わった。
「じゃ、じゃあ、わたしはこっちだから」
「は?おい、ちょっと待てよ」
ーーグイッ
麻生君に手を振って右に行こうとすると、突然腕を引っ張られた。
「え?」
「もう帰んのかよ?」
麻生君が不思議そうに目を丸める。
え?
だ、だって……。
『俺は左』って。
てっきりもう帰るのかと。
「どっかで少し話さねー?」
「へ……!?」
まさか……麻生君から誘われるなんて。
「う、うん……!この先に公園があるから、そこ行く?」
「おう」
麻生君はフッと口元を緩めて笑った。
その笑顔にドキッとして、わたしはとっさに麻生君から目をそらした。
嬉しい。
もう少し一緒にいられるなんて。
へへっ。



