「ジンさん、お母さんみたい」

楽しみにしていた蜂蜜を奪われて私はとてもご機嫌斜めです。

「好きな人の身体を心配して何が悪いんだ?」
不思議がるジンさんは、すぐに朝食の片付けを始めた。

今朝、緊張した面持ちで起きた私とは反対に、ジョギングしシャワーを浴びて、ジーンズ姿で朝食を作っていたんだから、隙が無さ過ぎる。

この人って、慌てたり失敗したり泣いたりとかするのか疑問。


「さっさと食べて、俺を案内しろ」
「案内を頼むにしては上から過ぎる。何処に行きたいんですか?」

段々、ジンさんに敬語を使うのも億劫に感じだした。
イケメンオーラに蹴落とされそうになるものの、横暴さには嘆息する。

「ベットと、パソコン、小さいワインセラーと冷蔵庫ももう一つ欲しい」
「電化製品か」
この人、本格的に此処に居座る気なんだわ。
いや、私が追い出されるのか。

この、黙っていれば気品漂う英国紳士に全国チェーンの家具屋とか電気屋さんって似合わないけど大丈夫かな。