私はまだこの地域に来て一年足らずだし、前の店のお客も此処まで来てくれるような奇特な人もおらず、サポートか新規の子が主だもんね。

「すっごいイケメンの外人がいるー」
スタッフの浜ちゃんが窓に貼りついて一階を見る。

「浜ちゃん、窓拭いたばかりなんだけど」
先月入ったばかりの、新卒の浜ちゃんこと赤髪と口ピがトレードマークの歩くミーハーは、窓と一体化して離れそうにない。

「あれって、あれじゃないですか。七階に出来る、元英国王室の料理人のスイーツ店のオーナー! わああ、イケメンだあ」

「ほら、10時になったから看板を出してきてよ」

「あん、いなくなっちゃった。イケメン料理人も10時きっかりで撮影終わらせて中に入ったみたいです」

しょんぼりしたままの浜ちゃんは渋々と看板を出しに入口へ向かう。


「くるみ、甘いモノすきじゃん。今日の休憩のときに行く?」

高瀬に言われて、ちょっと考えてから首を振る。