「くるみ、とうとう今日は遅刻したんだ」

同期の高瀬に爆笑されながら背中を叩かれた。

「遅刻って、朝礼に遅刻しただけじゃん。しかも、朝の番組が撮影してて大回りさせられたし」
「うお、朝からツンツン」

「うるさい!」

朝の蜂蜜を摂取できなくて、レジのカウンターに突っ伏してしまった。

ピンクを基調としたヘアサロン『Raspberry』は、最近オープンしたファッションビルの二階に出来たばかりのヘアサロン。
一階はジュエリー、二階はエステにサロンに化粧品、三階からは雑貨や洋服、最上階の7階には、色んなオシャレなレストランがある。

開店したてで、何かしらの店が朝の番組で紹介されたりしてるおかげで、スタッフ用の裏口に大きなワゴンカーが停まっていて邪魔で、たださえ遅刻気味だったのに朝礼に間に合わないなんて、本当に腹が立つ。

「お前、今日は予約無いんだから、俺のサポートしろよ。俺、予約五人詰まってるから」

「私、この一カ月でシャンプーの腕がまた上がった気がする」

高瀬は、前の職場からの引き抜きだから、その時の担当の子が通って来てくれるから、予約はけっこうチラホラあるもんね。

垂れ目にかかった金髪の髪、すらりとした長い足、そしてツンツンした私みたいな女にでも笑って会話してくれるトーク力。
悔しいけど人気なのが分かるから仕方ない。