「裏切ってなんかないよ」
「いや…俺は2人を守れなかった…慎のお母さんから頼まれたんだ。慎を守って欲しいって…それもできなかった」
当時を思い出して涙が止まらない
「それに…息子みたいに可愛がってくれた人の…大事な娘を好きになって…自分の傍にいてほしくて…なのに辛い思いをさせて…」
空の手が私から離れる
「…ごめんな、しーちゃん」
その瞳は、全てを1人で抱え込んできた悲しみ、辛さ、苦しさを語っていた
「…しーちゃん、本当は俺…レモン味のアイスが1番好きなんだ」
「…なんでっ…」
「しーちゃんとの大切な味」
…覚えてたんだ…全部
「ごめんね、俺の身勝手でしーちゃんをつなぎ止めて」
「お兄ちゃ…」
「ごめん。俺ちょっと出掛けてくる」
明らかに無理をして笑った空
なんで…
「そんな風に笑うの…?」
昔の空はいつも笑ってくれた
もっとずっと楽しそうに…
「しーちゃん、」
「…行かないで」
「…しーちゃんを泣かせるつもりなんてないんだ。無理をして笑ってる姿も見たくない」
「…お願い…!」
「大丈夫。すぐに帰ってくるから」
7年前、最後に空と別れるとき
あの時は空がこんな風に私の後ろ姿を見ていたんだろうか
私を好きでいてくれたなら、こんな気持ちで送り出したんだろうか
こんなに悲しくて、寂しくて、追いかけたくて、でも足が動かなくて。
行かないで…
その言葉すらも言えなくて。
でももし、あの時と同じ気持ちで今、空が歩き出したのだとすれば…
「…そらっ!!」
「…しーちゃん、」
あの時の私だったら、空に追いかけてきて欲しかった
「…空は、守ってくれた!助けてくれた!笑ってくれた!」
もうどこにも行かないように空を力いっぱい抱きしめる
「お母さんだって!空が大好きだった!よく言ってた…」
『慎がお兄ちゃんみたいな優しい人と結婚してる姿、お母さん見たいな』
「…!」
「いつもいつも…私だって…ずっとずっと好きなのに…」
空の顔を見る
「…また離れなきゃいけないの?」
涙が止まらない
「独りが嫌なんじゃない…空と離れるのが…嫌なの…」
「慎…」
「この7年間、空にはいろんなことがあったと思う。でも私のこの7年は…!
何回思い返しても…!空のことを考えてたことしか思い出せない…!」
もう…嫌なんだ
空と離れるのも、自分の気持ちを伝えない臆病な自分も

