「慎、あのさ」
「ん?早く寝なよ」
何か言われるのが怖くて無理矢理笑顔をつくる
「まだ熱ある?」
「いや、あのさ」
「そうだ、アイス買ってきたんだよ」
「慎」
「空は抹茶が好きなんでしょ?」
食べる?そう言ってカップアイスを差し出す
そんな私を見る空の目がどこか悲しくて…自分が虚しくなった
「食べない?」
「話を聞いてほしい」
「ごめんね、アイス溶けちゃうからまた後でもいい?」
ほら、とアイスを見せる
「今話したい」
「…お兄ちゃん」
「…!」
そう呼ぶと酷く傷ついた表情になった
胸が痛い
私がこんな顔をさせてるんだ
無意識にペンダントを握っていた
「ごめんね、まだ気持ちの整理ができてなくて…もうちょっと待って」
ニコッと笑ってから、アイスを閉まってくるなんて嘘をついて空から逃げた
仁くん…
最近はフッとした瞬間によく仁くんを思い出す
必ず迎えに来ると言ってこのペンダントをくれた彼を、どこかいつも探してしまう
「慎?」
ペンダントを握ったまま空の部屋の前にいた私に声を掛けてきたのは有さん
すごく不安そうな表情だ
「有さん…どうしました?」
「いや、そのペンダント」
有さんの目線の先には私が握っているペンダントがある
「…これはお守りですかね?」
「そうなのか」
「いつか必ず迎えに行く」
「え?」
「これをくれた人がそう言ってくれたんです。あとは秘密の合言葉も」
有さんにニコッと微笑む
「だからこのペンダント有さんにはあげませんよ」
そう言うと有さんの表情が和らいだ
「いるかよ、んなもん」
「あ…アイス忘れてた」
気づいたらアイスが少し溶けていた
「さっさと冷蔵庫いれないからだろ」
「せっかく買ったのに…」
「急げば間に合う」
私の手からアイスを奪って歩き出す有さんの後ろを追いかける
「有さん」
「食わねぇよ」
「分かってますよ」
「お前と違って食い意地張ってねぇからな」
「私だってそんなに張ってないです」
有さんはいつも私が悲しい時慰めてくれる
意地悪だけど、優しい
パタンッ
「これでいいだろ」
冷凍庫にアイスを入れて私を振り返る
「ありがとうございます」
「あ、そうだ」
「はい?」
「今朝行ったbarあったろ」
「はい」
「孝がまた来いってさ。また今度行くか?」
孝…さん
「行きたいです…」
初めて会ったのに懐かしい感じがした
「じゃあまた暇な日声かけろ」
「夜でもいいですか?」
「…あぁ。お前に任せるよ」
そう言うと有さんはリビングを出ていった
1人残ったリビングで私はソファーに身体を沈めた
…空から逃げてきちゃった
何言われるんだろ…
不安で不安でだんだん悲しくなってくる
でも聞かなきゃいけない
でも聞きたくない
こんな時、仁くんだったら私になんて言ってくれるかな…
『慎!俺が隣にいてやるから!』
きっと得意気にそう言うに決まってる
よし…
空とちゃんと話そう
立ち上がる前に私はペンダントを強く握った

