「あーそれよりお前さ…」
「はい?」
「いや、空さんのこと」
とても気まづそうに私をちらっと見てくる
「昨日のですか…」
「あぁ…」
私はすごく気を遣わせてる…
「いいんですよ。別に名前間違えることなんてよくあることです」
「…初めてか?」
「何がですか?」
「空さんがああやって名前間違えること」
そう言われて思い出した
アイスを食べている時のこと
「…空は、レモンのアイスって嫌いですかね?」
「レモン…?知らねぇけど。でも、よく抹茶のアイスなら食ってるな」
抹茶…
「スーパーとか、寄ってもらえますか?」
「…ただいま」
私はスーパーに寄ってレモンと抹茶のかき氷のアイスを2つ買った
「慎ちゃん、おかえりなさい」
私と有さんを出迎えてくれたのは新庄さん
いつもの様に優しい笑みを浮かべている
「空って、部屋ですか?」
「そうだと思いますよ」
優しく言ってくれる新庄さんにもう一つの袋を渡した
「…なんですか?」
「いえ…気を遣わせて、しまったかなと…よかったら、有さんと2人で食べてください」
袋の中身はカップアイスが2つ
目を丸くさせる新庄さんはすぐにいつもの冷静な新庄さんに戻った
「いえ、ありがとうございます」
新庄さんと有さんと別れて空の部屋に向かう
コンコンッ
「入るね」
返事の無いドアをそっと開ける
いつものベッドで空が座っている
「そら?」
ゆっくりと近づくと寝息を立てていた
座ったまま寝てるとまた熱上がっちゃうかな
荷物を置いて空を少し揺すってみる
「ん…」
黒髪から見えた目元は赤く腫れていて
「空、」
目の前でもう一度呼びかけると
ゆっくりと目が開いた
「…しん」
「ちゃんと寝なきゃ」
「慎…ごめん…」
そのごめんが何を意味するものなのか、よく分からなかった
でも一つだけ
きっと今回のことを深く聞いたって、傷つくのが私だということは明確だった
だから
「空、謝るくらいならちゃんとベッドで寝ててよ」
何もなかったフリをするしかできなかった
私たちの空白の7年間
きっと空の生きてきたこの7年間を否定したいと願ってしまうから

