微笑んだ先に咲く花






「昔、父さんが生きてた頃は兄貴は跡継ぎだからって厳しく育てられたんだ



それに反発して高校入学と同時に家を出てひとり暮らしするようになった

慎ちゃんの隣でね



電話してもなかなか帰ってきてくれなかったよ。まあ、今思えば慎ちゃんがいたからだね」


「私…?」


「そう。でも、兄貴が家を出て1年後に父さんに癌が見つかった
末期の癌でさ。俺が助けてやれることはしようって決めて聞くのに父さんは兄貴を呼べしか言わなくてね


兄貴を呼んでも親子喧嘩

しばらくして父さんが死んで、兄貴に帰ってきてもらったんだ。無理矢理だけどね…」


そう話す声がとても悲しく揺れていた






「父さんの跡を継いだのはいいけど、兄貴は寝る間も惜しんで働いてた

周りの奴らが心配するくらい。何かを忘れようとするみたいに。」



忘れようと…



「で、心配して兄貴にご飯届けた日に見たんだ。兄貴の部屋に飾ってある写真



慎ちゃんと2人で写ってる写真をね。
あの雑な兄貴がその写真だけは大切そうに飾ってて、なんとなく察したよ


兄貴はこの子を好きなんだって


この子を忘れようとしてるんだ。大切だからこそ…


もう何も言えなくなった。無理矢理帰ってこさせたのは俺で、そんな俺に慰めるなんてできないだろ?」



明さんの腕に力がこもる
それに応えるように抱きしめる腕に力をいれた




「それで、兄貴を避けたんだ
だから今でも俺はあの家に住んでない


久しぶりに帰って驚いたよ
写真に似てる子が兄貴と一緒にいたんだ」




きっと優子さんだ…


私は自然と聞こえないように明さんの体に耳をつけた


聞きたくない…



そんな私を見て


「ダメ。ちゃんと聞いて。」


明さんは私の頭を撫でてから体を少し離した