やはり、そこには真っ青な顔をした下っ端が2人いた。
下っ端の2人は、驚き俺を説得し中に戻そうとする。
「蒼竜様!?」
「お、お部屋にお戻りください!」
「美竜様の約束!」
「じゃ、じゃあ!
今のママの悲鳴は何なの!?」
「き、気のせいですよ!!」
「ねぇ!隠さないで教えてよ!
だって!今の絶対にママの悲鳴だった!
ママは悲鳴なんかめったにあげない人だもん!
ねぇ!!!!」
「「…」」
「…教えて…くれないんだね…
ごめんね」
俺は、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、下っ端を殴り部屋に投げ入れ、鍵を閉めた。
「ごめん。
しばらくの間、結翔のこと…よろしくね。
ママ、パパ。
莉茉、少しだけ悪い子になるね」
俺は小さい頃から、鍛えられてきた。
女子だから…という理由で、俺に訓練させないことは何一つなかった。
全てを厳しく教えてくれた。
だから、族の中では春竜、美竜、兄弟には勝てないものの、下っ端には楽に勝てるぐらいまで、力がついた。技を身につけた。
そして、いつも稽古が終わるたび美竜は呟いていた。
『はやく…
早く強くなりなさい。
私たちがいつまで生きられるかは分からないのだから…』
俺には、その言葉は当時理解できるはずもなく、スルーしていた。
でも、今なら分かる。
そして、俺は歩き出す。
長い長い廊下を。
歩いても
歩いても
美竜と春竜は見えてこない…。
どの部屋を見ても、いない。
そして、震える手で最後の総長の部屋の扉に手をのばす。


