しばらくは二人とも動けなかった。 先に言葉を発したのは、彼だった。 「あの、怪我とかないですか?」 その一言でぼんやりとしていた意識が戻ってくる。 「だ、大丈夫です…」 そう言って慌てて立ち上がる芽依子。 「それならよかった」 芽依子に怪我がないことを知ると、すぐに歩き出そうとする彼がどうしようもなく寂しかった。 「あ、あの!助けてくれて、ありがとうございました…!」 「お気をつけて」 フッと微笑み、歩き出す彼。 その後ろ姿を見ながら、自分の心臓がドクンドクンと脈打つのを聞いていた。