「ねぇ、何か気づかない?」

 可愛らしい彼女が、不満たっぷりに俺を見下ろす。

「あぁ?お前、うるさいよ?」

 読んでた本をパタリと閉じて、睨み上げると、彼女は一瞬泣きそうな顔で怯える。
 その表情が、可愛くて、思わず抱き締めたくなる衝動に駆られるが踏みとどまる。


 彼女は知らない。俺が彼女をこんなに愛しく思っている事を。
 俺も教えない。
 彼女が求めるものは一生あげない。

 一生、俺を追い掛けてればいい。


「こんな奴に聞くだけ無駄だよ。」
「せっかく可愛らしいんだから笑って。」

 仲間達が泣きそうな彼女を慰める。

「本当?ちゃんと可愛く見える?」

 仲間達を潤んだ瞳で見上げる彼女は、顎に手を添えて可憐に笑った。