そうしたら納得したのか
睦月君は、その手を受け取り先生のところに。

ひょいと抱き上げられるとしがみついていた。

先生は、ため息混じりに
背中をポンポンと叩きあやした。

「まったく。世話の焼ける奴だ」

「あの……」

自分は、どうしたらいいか戸惑っていた。

睦月君の泣き顔を見たら
泣けなくなってしまったし…この微妙な空気を
どうしたらいいのだろうか?

すると先生は、私の頭をポンと撫でてきた。

えっ……?

顔を上げると先生が

「悪かったな。涼花」

謝罪してくれた。
一言だったけど……何だか嬉しいと思った。

「いえ、こちらこそ。
盗み聞きしてすみませんでした」

頭を下げた。

「お前が悪い訳ではない。
ただ忘れるな。過去は、あくまでも過去だ。
だから気にするな」

それだけ言うと背中を向けてしまった。

先生…。

すると浜野さんが

「涼花ちゃん。悪い…話をふったのは俺だ。
藤崎は、涼花ちゃんに
聞かせるつもりなんて無かったんだ。
だから、すまない」と謝罪してくれた。

「…はい。分かっています」

割り切れていないのは、自分自身。
勝手にショックを受けて落ち込んでいるだけ

前を向いて歩いているはずが
いつの間にか自分で立ち止まり
振り向いてしまっていた。

それは、自分が弱いからだ。
精神的に…。

睦月君は、そんな私を早く気づき
泣かないように気を遣ってくれたのだろう。

お陰で泣かずに済んだ。

強くならなくちゃあ…もっと。
迷惑をかけないように