ありがとう…お母さん。

私を信じて自由にさせてくれて
心の中で感謝した。

「行っちゃいましたね…」

やっぱりうるさかったけど
行ってしまうと寂しくなってしまう。

母親だから、なおさらだ。

すると先生は、ため息混じりに

「まったく。お前のせいで余計な気遣いをした。
仕事も立て込んでるのに…いい迷惑だ!」

ブツブツと文句を言いながら
歩いて行ってしまう。

「あ、そんな事を言わずに待って下さいよ~」

慌てて睦月君の手を繋ぎ追いかけた。

先生は、素直ではないけど
何やかんやと言いながらも優しい。

ちゃんと母をもてなしてくれた。

車を乗り込み帰る時に先生にお礼を言った。

「母のこと……ありがとうございました」

「別に……大した事はしていない。
だから、お礼を言う必要はないが?」

ぶっきらぼうに運転をしながら言う先生だった。

「いえ、お陰で助かりました。
母もお礼を言っていました。
ありがとうございますって…でも、どうして?
あんなに嫌がっているように見えたのに」

どうしてだろうか?

すると急に黙ったまま運転する先生だった。

あれ?
聞いたらダメな事だったのかしら?

謝るべきかオロオロしていたら

「……別に。せっかく母親が
お前に会いに来たんだ。
なら、その会える時間を大切にするべきだと
思ったからだ」

先生は、真っ直ぐ前を向いたまま
そう言ってきた。

そうか……。

先生のお母様は、幼い頃に離婚して
離れ離れだったわ。

だから、会える時間を大切にしろと
思ってくれたのだろう。

奥さんもそうだけど……いつどうなるか分からない。
寂しさを知っているから…なおさらだ。