「母親は、俺が小さい頃に離婚していません。
父親と祖母の3人で暮らしていました」

先生がそう言ってきた。

えっ?そうだったの!?

そういえば私は、先生の過去を何も知らない。

尋ねた事も無かったが…話してもくれなかった。
まぁ、恋人でも無いし無理もないのだけど

「そうだったの。
じゃあ家事は、お祖母様が?」

「えぇ。父親は、仕事が忙しい人で
海外やいろんな所に飛び回っていたので
ほとんど祖母に育ててもらいました」

味噌汁を飲みながらさらりと応えていた。

お父様が忙しいからとはいえ
お祖母様に育てられた先生。

幼い頃なら寂しかっただろう。
だって、両親の愛情が欲しかったはずだ。

「それは、寂しい思いをしてきたわね。
ごめんなさい。変な事を聞いて」

お母さんがそう言い謝ると先生は、

「いえ、構いません。
だから睦月には、俺と同じ思いをさせたくない。
母親が居ないから
寂しく感じているかも知れませんが」

少し悲しそうな表情をしていた。

先生……。

「だ、大丈夫ですよ!睦月君は、その分。
先生からたくさん愛情を貰っています。
だから睦月君は、あんなに
いい子に育っているのだと思います」

それは、見ていても分かる。
先生が睦月君の見てる目は、愛情深く優しい。

「睦月君もパパ大好きだもんね?」

そう言い話をふると
コクリと連続で頷いてくれた。

「……アホ。こっぱずかしい事を言わせるな」

先生は、少し照れたような表情をすると
睦月君の頭を撫でていた。

あ、照れている……。