「あ、ありがとうございます……」
突然そう言われたので驚いてしまい
なおさら息子ではないと言えなくなってしまった。
「坊主。これも味見をしてみるか?
これは、何を隠し味をしたと思う?
当ててみろ」
料理長らしき人は、あれから色々と
味見をさせてくれた。
しかも、すべて言い当てる睦月君。
凄過ぎる。すっかり気に入られてしまい
大きくなったら、ウチに来い!とスカウトされた。
帰り道。
味見をしていたせいで遅くなってしまった。
タクシーに乗り帰りを急いだ。
「睦月君凄かったねぇ~よく分かったね?」
話しかけると睦月君は、ぐったりとしていた。
あれ?顔が赤いような……。
ハッ!!
慌てて睦月君のおでこを触ってみた。
熱がある……そういえば
味見の時に喋りっぱなしだったわ!?
どうしよう……途中でやめさせるべきだった。
睦月君にとったら話す事は、
ストレスになるのに…私の馬鹿。
オロオロしながら居ると
自宅マンションに着いてしまった。
(うっ…… )
怒られる覚悟でお金を払い
睦月君を抱きかかえるとタクシーから降りた。
そして、インターホンを押して
先生にオートロックを開けてもらう。
ドアを開けて待っていてくれた先生は、
この状況に驚いていた。
「随分と遅かったな……ってどうした!?」
「すみません……私の不注意で
睦月君お喋りし過ぎて熱を出してしまいました」
申し訳なさそうに話した。
「はぁっ?拓馬君の所で遊んでいたのだろう?
アイツ…睦月の性格よく知っているから
熱出すほど喋らせないと思うのだが……?」
ぐったりしている睦月君を受け取り
抱きかかえながら言う先生。
(うっ……ごもっともです)
「お前……一体俺に隠して何をしていたんだ?」
ギロッと睨み付けられる。
ビクッと肩が震え上がった。
怒っている…。



