遼side

俺は一人、廊下を速く歩く。
ただたださっきの出来事を考えないようにするために。

〈好きだよ、りょーちゃん……っ。〉

確かに聞いた、波瑠の言葉。
……嘘だろ?

あれは幻聴だったのか。
……いや、幻聴なはずがない。

俺だって……波瑠が大好きなんだ……。

好きで。

愛おしくて。

守ってやりたくて。

……今すぐ戻って抱き締めてぇよ……。


「でも俺にはできねぇよ……。」


俺の虚しい呟きが広い廊下に響く。
それがある人に聞かれていたなんて、俺は思ってもいなかったんだ。