何秒?何分?

数えるのもこわいくらいに
しん、とした沈黙が圧しかかってきたあと
ルーカスさんが、そっと唇をひらいた。


「それは…、」

いつもこちらを気遣うようなトーンとは違った
戸惑いをふくんだ、彼の声だった。


おそるおそる彼の顔を見ると
困ったように、わたしを映す瞳が視界に入った。


彼の視線が、ふっとうつむいていく

わたしから、そらされていく


「すみません…、」

ほんの、数日前まで届くと思って
のばされかけていたはずの手は
もう、のばされることもなくて


只々、泣きたいというよりも
時間を巻き戻してほしい気持ちだけが
わたしのなかに、募った。