デザートを食べ終えても
兄がレストランに来る気配はなかった。
商談中だということで、こちらから電話をかけるわけにもいかず
メールで、今から帰宅することを告げて
わたしとルーカスさんはレストランを出ることにした。
息をすうと、肺にふれる空気がつめたかった。
タクシーに乗ると
わたしとルーカスさんのあいだには、この前と同じように微妙な距離が生まれた。
触れそうで、触れることのない
危うい数センチ
なんだか食事のときより
今のほうが、ずっと緊張してしまう
「麻友子さん」
はい、と返事をした自分の声は
いつもより高く響いた。
「プレゼント、何も用意できていなくてすみません」
「そんな、全然です。寧ろ今日は来て下さってありがとうございます」
というより彼には余計な出費と時間をとらせてしまったのだから
申し訳ないのは、こちらのほうだ。
