なんと言っていいのか
わからなくて、こくんと首を縦に動かすと
さきほどよりも一層やわらかくほころんだ視線が
わたしの頭上に降りつもっていく感覚がした。
そっ、と彼の気配がつよくなって
おそるおそる顔を上げると
ルーカスさんの手が ゆっくりと、こちらに
のびてくるのが見えた。
そのまま触れることなく、
窺うような位置で止められた手と
沈黙で問いかけてくる瞳が、
わたしの視界を満たす。
1秒、2秒…3秒
視線が重なりあって
何秒だったのかは、知らない。
ただ、彼のくちびるが
声を零すまえに――…
「ただいまっ!」
聞きなれている兄の声が
場違いなほど明るく、玄関から届いた。
