恋とは停電した世界のようです


「お風呂上りに髪の毛は乾かしてくれません」

つぶやいて、ふっと視線を外すとき
一瞬、彼の口がぽかんと小さく開くのが見えた。

そのあとすぐに、くつくつと喉の奥で噛み殺すような
わらい声が、わたしの頬をなでる。

「…気に入りましたか?」

未だ笑みを抑えきれない、というように
口元をわずかに手のひらで隠しながら、ルーカスさんがわたしに問いかける。

よほど面白かったのか
目尻には、仄かにシワが浮かんでいた。

「…とても」

「麻友子さんが望むなら、いつでも」

そのときの、
ふわりと細められた瞳が
戸惑うぐらいに優しい青で濡れていて

思わず、息が詰まった。