「よかったら、こちらも食べてみてください」
そっ、と揃えられた彼の指先が
ガラスの器に軽く触れる。
わずかに水滴が残ったままのイチゴは
瑞々しい香りが零れるように、あふれていた。
いただきます、と呟いて口に入れると
微かに酸っぱくて、歯を立てるとジワッとした甘さが奥歯に伝う。
「ん、美味しい」
「まだ旬じゃないので、そんなに甘くないかもしれないんですが」
「そんなことないです。ルーカスさんも食べてみてください」
「いえ、麻友子さんに買ってきたので…」
「イチゴ、嫌いですか?」
ちらりと見上げながら尋ねると、彼は遠慮がちに微笑んだあと
「では、…ひとつだけ」と紅い実に手を伸ばした。
