「ごめんなさい…兄が遅くまで付き合わせてしまって」

「大丈夫デス。それに、僕も楽しかった」

「あの、今からだと電車もないし、よかったらこのまま…」

「ここから近いので心配ないです」

「でも…、」

そう言って彼を見上げると、柔らかい青色が視界に触れた。

「三澤さん、すっかり眠ってます。
なのに、初めて来たばかりの僕が長く一緒に居いるの、あまり良くないです」

「へ…っ?」

「good night」

ぽかんと口を開けたままのわたしに
彼は、うっとりするような異国の発音を残すと、バタンと玄関の向こう側に消えてしまった。