いつもより熱めのお湯を浴びながら
シャンプーのポンプを押していると、
雨宿りをさせてもらった日のことを思い出した。

(ルーカスさんのところで使わせてもらったシャンプー、いい香りがしたなぁ…)

高いから、あたり前だろうけど。

(それに化粧水も…)

そこまで思い出すと、一気に気分が落ち込んだ。

(妹さんのだ…って言ってたけど)

本当にそうなのだろうか?

写真立てに飾られていた二人の姿は思い出したくなくて
思考を断ち切るように、ざぁっとシャンプーを流した。

(彼女さんがいるかもしれないのに、ごはん…)

浮気のボーダーラインは人それぞれだろうけれど
一般的に、あまり好ましくないことぐらいは分かる。

ふと、教室で心美が言っていた一言が再生された。

「彼女が居るって向こうが言うまでは、押しちゃえばいいのよ」

あの子は力強くそう言っていたけれど
果たしてそれは許されるのだろうか。

そこまで考えた途端、なんだか自分がものすごく
あざとい人間になった気がして、胸の中が重くなった。