ないよ。と言い切れなかった理由と向き合いたくなくて、
自然と歯切れの悪い返事になる。


冷蔵庫の中には一昨日買ったばかりの食材がわずかに残っていて
リンゴジュースでもあればと期待したものの
そんなものはなくて、仕方なくミネラルウォーターを手にとる。

自分の感情を誤魔化すように、そっと冷蔵庫の扉を閉じると
パタンと薄い音だけが耳に残った。







部屋に戻って携帯を開くと
ルーカスさんからメールが届いていた。

「今日はわざわざ来て頂いて、ありがとうございました。
麻友子さんから借りたCDを聴いてます。

とくに、魔法の料理という曲がとても好きになりました」