恋とは停電した世界のようです






家に着くと、兄は既に帰宅していて

「おはえひー」

しゃこしゃこと歯磨きをしながら出迎えられた。

歯ブラシを持つ方とは反対の手が、
パーカーの真ん中のポケットに突っ込まれている。

「ただいま」

そう告げると「ん、」と短く頷きながら
洗面台の方に遠ざかるスリッパの音がペタペタと玄関に散らばった。


部屋着に着替えたあと、
喉がとても乾いていることに気が付いてリビングに向かうと
兄がソファーにもたれてテレビを見ていた。

隣のテーブルにはビールの缶が置かれていて
グラスの底には、たくさんの泡が残っていた。

「今日、楽しかった?」

「え?」

冷蔵庫を開けた瞬間、話しかけられて
思わず飲み物を探す手が止まった。

「ルーカスとのごはん」

「あ…うん、まぁ」

あいまいに頷くと、彼は顔だけを振り向かせて

「そんなでもなかった?」

「ん~…。や、そんなことは全然…」