「ルーカスさんは女性の方から人気がありそうですね」
「え?いえ、まさか」
全然そんなことないです。と彼が困ったようにわらうので
「そうですか?」と聞き返すと
「お菓子の差し入れは、よくもらいますけど…
どうも、外国はお菓子をよく食べてるイメージがあるみたいで」
…それはたぶん、モテているという部類に入るのではないだろうか。
うれしそうに彼にお菓子を手渡している女性社員を想像すると
チクリと小さな刺が胸に触れた気がした。
*
送っていきます、と言われたので
一度は断ったものの「何かあってはいけないので」と強く言われてしまい
彼の好意にあまえることにした。
てっきり電車に乗るんだろうと思って
SUICAを探していたら、ルーカスさんがタクシーをとめてくれた。
タクシーに乗ると、微妙な空間が
わたしたちの間に生まれた。
赤信号になるたび、一瞬は その振動で触れてしまいそうで
だけど走っているあいだは伸ばさないかぎり、触れることのない距離に置かれた、お互いの手。
