恋とは停電した世界のようです


会社から程近い場所にあるお蕎麦屋さんは
時間帯のせいか、まだあまり混んではいなかった。

高い仕切りで区切られた席は、隣に誰かが座っても
顔が見えない造りになっている。

食べやすいものがいいな、と思って
わたしは かけそばを、ルーカスさんは月見そばを頼んだ。

そういえば、外国の人は音を立てて食べるものが苦手だと以前テレビで見た気がして

「ルーカスさんは大丈夫なんですか?その、お蕎麦」

「ハイ。以前、三澤さんにお蕎麦をごちそうになったんです。そのとき食べやすくて好きになりました」

なるほど。確かにスープは比較的こってりしたものが多いし
外国の人でも食べやすいのかもしれない。


ふたりぶんの蕎麦が運ばれてきたとき
「いただきます」と小さく告げたら、視線を感じたので
ふっと顔をあげると、柔らかくこちらを見詰めてくるルーカスさんと瞳が重なった。

不思議に思っていると、ルーカスさんはハッとしたように少しだけ慌てて
「すみません」と申し訳なさそうに視線をふせてしまった。