きっと彼の言葉に他意はない。
そう思うのに、ドキッと心臓が揺れてしまう。
「約束のCDです」
「あ、ありがとうございます」
スッ、と差し出された紙袋を受け取ると
自然と気分が落ち込んでいくのを感じた。
(もうこれで用事、すんじゃったな…)
わかっていたことなのに、
悲しくなる。
それでも「帰ったら早速聞きますね!」と笑顔をつくって視線を上げると
青い瞳が、わたしを見ていた。
「あの…今日は三澤さんは帰りが遅いと聞いたのですが」
「あ、はい。そうなんです。だから今日は晩ごはんもいらないって言われちゃって」
アドレスのことを訊かれたときに、
今日の夕飯はいらない事も告げられていた。
ひとりぶん作るのも面倒だし
マックで適当に済ませようかなと考えていたら
目の前の視線が微かに迷ったように揺れたあと
「近くに…、」と唇がうごいた。
「近くに、お蕎麦屋さんが出来たんです。その、もし良ければ」
え、と驚いて彼の顔を見ると
どこか緊張したような表情が
沈みかけた夕陽に、はんぶん溶けていた。
