部屋の外には暗闇が降りていて
駐車場に辿りつくまで、街灯が星灯りの代わりになっていた。
「本当はさー、ルーカスが家まで送っていくって言ってくれたんだけど
そこまで世話になるわけにもいかないしなってことで
連絡もらってから、すぐ出てきたんだよ」
「そっか…ありがとう」
兄の車に乗るのは久しぶりで、
交差点に差し掛かったとき、ウィンカーの音がカチカチと響いて
トントン、とハンドルの上を叩く兄の指先が見えた。
「ここの信号長いなぁ…」
「そうだね」
雨のせいで、じんわりとぼやけた赤信号の色が
目に優しく映る。
「あいつの部屋、すげー綺麗だったなぁ」
「誰かが掃除してくれてるんじゃない?」
「あー…」
「…知ってるの?」
「ん?」
「掃除してる人」
「んー、いや…つか、あいつ自身綺麗好きだもん。デスクの上も、いっつも整頓されてるし。
見た目だって身綺麗にしてんじゃん」
わたしが聞きたいのは、そういうことじゃない。と落胆していると
「あ、今日メシないよな。コンビニ寄るか?」
兄のあかるい声に反応するように、信号が青に変わった。