恋とは停電した世界のようです


兄をリビングのソファーまで連れてきてもらうと
急いでキッチンに立って水を注いだ。

「はい、お兄ちゃんこれ飲んで」

「おー、さんきゅーな」

「ルーカスさんも、良かったら飲んでください」

そう言ってコーヒーの入ったマグカップを渡すと、瞳を丸くして驚かれた。

「いいんですか…?」

恐縮したような視線に、どうぞと促して
角砂糖とミルクの入った小瓶をテーブルの上に置くと
彼の口角が嬉しそうに上がった。

「三澤さんが羨ましいです」

「えっ?」

「とても優しい妹さんが居て」

「い、いえ、そんな…」

寧ろ彼は、酔っぱらった兄を家まで送ってくれただけでなく
先ほどから兄のネクタイを緩めてくれたり、お水を飲ませてくれたり
随分と介抱を手伝ってくれている。

当然の行為どころか、
コーヒーだけでは全く足りないと思ってしまうぐらいだ。