恋とは停電した世界のようです


「ここに座ってください」

「へっ?」

ルーカスさんが、そっと手のひらで誘ったのは
ベッド…ではなく
部屋の手前に置かれたドレッサー用の椅子だった。

「髪を乾かさないと、風邪をひくので」

「え。あ、あの…?」

断る間もなく、ドライヤーを持つ手とは反対の指が
するりとわたしの髪を掬う。

(…っ、手が)

もう少しで首に触れられてしまいそう距離の短さに、体温が上がっていく。
ドキドキじゃ追いつかない、鼓動の速さで。

「あつくないですか?」

「だ、だいじょうぶですっ」

ドライヤー自体は全く熱くない。

熱くない、のだけれど…

髪と髪のあいだにルーカスさんの長い指先が
さしこまれるたび、声にならない悲鳴が胸の中にあふれてしまう。


(いつも行く美容院では、こんな緊張しないのに…)

恥ずかしいのに
嫌じゃなくて、寧ろ…


寧ろ――、