「こんなときに、僕のことを気遣ってほしくないです」

ぽつりと水滴のような音程が
鼓膜を伝った。


ぽたぽたと雫を落とす前髪の隙間から覗いたルーカスさんの顔は
すこし悲しそうに、唇だけが持ち上がっていた。


途端に、ツキリと透明な破片が胸に刺さった気がして
こわくなる。


申し訳ない気持ちと、気まずい雰囲気を胸に抱えたまま
じっと視線を伏せていると


「もし、よければ」

と彼の声が雨音と一緒に届く


「僕の家で雨宿りしていきませんか?」