心美と別れたあと駅を出ると、
空が暗く濁っていた。

スーパーに寄りたいのに…と今にも降り出しそうな気配に
面倒臭くなりながら歩いていると
すぐにポツポツと冷たい感触が頭や腕に落ちてきて
走り始めた頃には、あっという間に雨音が強く変わっていた。

雨宿りのために滑り込むようにして辿りついた先は
ずいぶんと古びた赤い屋根の下で、消えかけた文字でタバコ屋と描かれているのが
うっすらと見えた。


べっとりと額にはりつく前髪にイライラしながら
重くなった服の裾を、ぎゅーっと絞っていると

「…麻友子さん?」

ふっ、とロウソクを灯すような
あなたの声が耳に触れた。