恋とは停電した世界のようです







お勧めのスパゲッティ―屋があるのだと言われ
彼と足を運んだ店内は隣の席との間隔が遠く、落ち付いて食事が出来た。

なんだか今年の冬は、兄以外の人と過ごすことが多いなと思いながら
口にした水は微かにレモンの味がした。

「麻友子さんは学校オヤスミなんですか?」

「昨日から冬休みなんです」

わたしの言葉に、懐かしそうに目を細めて

「ちょっと羨ましいです」

「ルーカスさんは毎日お仕事大変ですよね」

「そうですね…だけど、こうして働ける身体があって仕事があってお金をもらえることは、やっぱり嬉しいですよ」

「嬉しい?」

「当たり前だと感じている環境は、みんな平等に与えられるものとは限らないです」

水を含んだような声が、天井から届くクラシカルな音色に
ひっそりと溶けていく。

初めて会ったときにも感じたけれど、
ルーカスさんの声には常に静かな空気が絡まっていて
その柔らかなトーンが、とても耳に心地よい。