恋とは停電した世界のようです


「本当はこのままメシでも奢ってやりたいんだけど…、」

「いいよ。昨日の晩ご飯の残りがあるし、家でのんびりするよ」

「ほんとごめん。でもよかったら何か好きなもの食べて帰れよ」

財布の中から、半ば勢いよく三千円を抜いて「電車賃も含めてな」と
わたしの手に握らせるので

「ちょっと、多すぎるよ」

「いいんだよ。これがないと本当に困ったんだ。その気持ちだよ。余った分はデザートでも食べろ」

「でも…」

「まぁいいから。んじゃ、悪いけど俺もう行くな。次の対応があるんだ」

ぽんぽん、と言い聞かせるようにわたしの両肩に触れたあと
「気を付けて帰れよ」と背を向けて、去ってしまった。