恋とは停電した世界のようです








ちゃぷちゃぷと隣から聴こえてくる水の音に、そわそわと心臓が泳いでしまう。


「あの、ルーカスさん。本当に私ひとりで大丈夫ですから…」

「ごちそうになった、お礼です」

食事が終わったあと、ルーカスさんから後片付けをさせてほしいと申し込まれた。

お客様だからと断ったものの
どうやらルーカスさん自身の気がすまないらしい。

それなら一緒に、ということで
こうして今、彼とキッチンに立っている。

ルーカスさんは、洗剤を落としたあと水滴を弾くところまでやってくれるので、
わたしが出来る事といえば、食器を拭くぐらいのものだった。

手許からは食器と布巾のキュッキュッと乾いた音が零れて
わたしとルーカスさんのあいだには、ザァーと水の流れる音が響いた。


…なんだか、ふしぎだな。

ちらり、と盗み見た横顔は
美術室に置かれた石膏像のようで、
天井から届く灯りが高い鼻の上をスッと撫でていた。