時計の針が20時を迎える前に、わたしたちは鍋をつつき始めた。
醤油や昆布の香りが部屋中に広がり始めた頃、
鍋の中では豆腐に白身の魚と鶏肉が身を寄せ合いながら
グツグツと煮たっていた。
「ルーカスさんは好き嫌いありますか?」
「いえ、何でも食べられます」
「だって、お兄ちゃん」
「うるさい。少しぐらいエノキを食べなくても俺は死なんぞ」
先ほどから、エノキを避けている兄の背中が僅かに丸くなるのを見て
わたしとルーカスさんは、わらいあった。
鍋の具材をよそって差し出すと、
ルーカスさんは二日前と同じように、酷く恐縮した表情で
そっ、とわたしから皿を受け取った。
灯りの下で見る彼の指先は、わたしよりずっと白くて
ほっそりとしていた。爪も短く切り揃えられている。
