「おかえりっ、麻友子!」
「あ、お兄ちゃん。あのさ、誰か」
来てるの。
問いかけた先、兄の肩越しから覗いた金色の髪がわたしの視界を奪って
なぜだか、スッと息が詰まるのを感じた。
「コンバンハ。お邪魔してます」
「…ルーカス、さん」
おどろいて、ぼうっと立ち尽くすわたしに
「今日の晩メシ一緒にどうかって声かけたんだ」と兄の明るい声が降ってきた。
「あ、そ、そうだったんだ」
「なに、お前ひょっとしてメール見てねぇの?」
「うん…買い物してたから」
「わり、電話にしときゃよかったな」
「あ、ううん。それより今日、お鍋しようと思ってたんだけど…」
ガサリ、とネギや白菜の入った袋を兄に見せると
「別に大丈夫だろ」と呑気な返答を零されて
「な?ルーカス、今日の晩メシ鍋にするんだけど、いける?」
「ハイ。お鍋、楽しみです」
振り向きながら兄が尋ねたメニュ―に
ニコニコとわらうルーカスさんの姿が見えて、
やっと少しだけ
ホッと肩が軽くなった。