その時だった。

園長の歩美が口を開く。

『西条さん。貴方は保育士になるのが夢だとおっしゃいましたね?』

優しく、そして強い口調で言った。卓也は、その強い眼差しに緊張が走る。

『はい。それが僕の夢です。』

『現状ではその夢が、ことごとく破れています。今後はどうなさるのですか?』

卓也は顎に指を置き、少し考える仕草を見せた。

『うーん…夢は逃げない。僕が諦めない限り僕は保育士になる。まだ負けたわけじゃない。』

卓也の言葉に歩美はニッコリと笑った。

『ふふふ。良い答えですね。今後ともよろしくお願いします。』

『え?』

卓也も他の面接官も目を見開いた。

『園長、何を考えているのですか?元暴走族など…』

『私が作った就業規則には書かれてないですよ。元暴走族を雇ってはダメだとは。』

歩美の強い眼差しに面接官は黙った。この時、卓也は担ぐべき人物に出会ったのだった。