『おはようございます。』

壇上から歩美先生が挨拶をした。今日は月に一度の全体朝礼の日だった。小さな体育館に、先生たちが集まっている。

『今日は大切な話があります。』

歩美先生の真剣な眼差しに緊張が走る。

『皆さん、知っての通り、ひまわり園の経営は非常に厳しい状況にあります。』

少子高齢化が進み、子供達の数はどんどん減っていた。それに伴い保育園の数も減っていく。子供の数が減るのに、待機児童が増えるという悪循環が起こっていて、歩美は頭を悩ませていた。そこで、前々から考えていたプランを実行しようと思い立ったのだ。

『ひまわり園を増設して倍の数の園児たちを預かれる園にしようと思っています。』

歩美の提案にどよめきが起こった。

『それはいくら何でもリスクが高いですよ。』

1人の先生が口を開く。

『わかっています。それでも、私はやりたい。』

歩美は真っ直ぐ先生たちを見つめる。

『簡単に倍にすると言っても、どうやって園児を集めるのですか?』


『市役所の会場で説明会を開きます!私たちのやってきた事は間違ってない。絶対に保護者の方にも伝わるはずです。』

歩美はそう言った後、ある男に視線を向けた。そして、続けて言った。

『その説明会を西条くんに託そうと思います。』


『…え?』