公園に着いた卓也は辺りを見渡した。いつものベンチにポツリと一人座っているのに気付いた。卓也はスタスタと近づいて声をかける。

『もう良いって言っ………』

卓也はそこまで言って言葉を失う。そこにいたのは沙也加ではなく久美だった。

『お疲れ様。』

あの天使の笑顔が卓也を包みこむ。真っ暗な公園に明かりが灯ったようだった。固まる卓也に続けて久美が話しかける。

『仕事、頑張ってるね。』

『ああ、まあな…』

『座ろっか。』

『おん。』

二人はいつものベンチに隣同士に座った。久美がカバンから紙袋を取り出す。ガサガサとその音を懐かしむ。紙袋からボロンニャのパンを取り出して卓也に手渡した。まるで、あの頃に戻ったようだった。