部屋に沈黙な時間が流れる。時計のチッチッという音だけが一定のリズムを刻む。そのまま時間は流れ、約束の10分が経とうとしていた。

『外で話をつけてくる。』

そう言って卓也が立ち上がった。

『ダメだよ。』

久美が口を開いた。沙也加も同様に小さく首を振った。さきほどの映像が2人の頭に浮かんでいた。

『大丈夫。任せとけ。』

卓也は優しく微笑んで部屋を出て行った。その日、卓也も加川も、久美の部屋に戻る事は無かった。詳細は分からないが、その後、大学からも加川の姿は消えた。ようやく久美の人生が進み始めたのだった。