夏の暑さが過ぎ去り、山々に黄金色のイラストが描かれ始めた。公園には、女郎花が咲き誇っていた。卓也は、この花が大好きだった。高校生の時、久美と図書館で女郎花の事を調べた。

意味=美人も圧倒する花の美しさ


《綺麗だもんね。私なんか敵わないや。》

久美の言葉に、卓也は『ハハッ』と笑ったが、卓也の中では、女郎花=久美だと思った。

そんな図書館の光景が頭に思い浮かんだ。卓也は公園で1人、時間を過ごす事が多くなっていた。それは何か大切な物を失った穴を埋めるように。

そんなある日の事だった。

『西条くん?』

卓也の背後から声を掛けられた。卓也はゆっくりと声の方に振り返る。そこには見覚えのあるような、ないような同年代の女性が立っていた。
卓也は、頭をフル回転させる。それでも、答えが出ない。卓也はバツが悪そうに言った。

『えっと…』

困った表情を浮かべる卓也に、その女性は笑って答える。

『久美の友達の沙也加です。これで3回目だよ。』

『あー!』

卓也は大きく口を開いて、思い出したように人差し指を何度も振った。