『西条さん、おはようございます』

背後から声をかけられた。とても落ち着いた清楚な声の持ち主だ。

『おはようございます。園長先生。』

卓也は深く頭を下げた。卓也にとって恩人とも言える人だった。歳はまだ、29歳と若いが強い信念を持って保育園を運営している。そんな園長先生に卓也は忠義を尽くすつもりでいた。

そのきっかけは就職活動に遡る。

中学とは打って変わり、真面目に過ごした高校生活だったが、やはり基礎を怠ったツケは大きかった。出席日数は何とかクリア出来たが、期末テストは散々なものだった。それが就職活動で、そこまでマイナスになるとは思ってもみなかった。